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kpinkcat(モモネコ)

Author: kpinkcat(モモネコ)

2009年1月からジョギングを開始するも、
数か月すると走らなくなる。
3年ごとにブームが訪れ、今回3度目。
2015年に過去最大重量を記録した
のをきっかけに再び走り始める。
今度こそ、過去最速を目指したい。
自分を取り戻す旅。。。

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月夜見駐車場を後にするとまたもや下りから始まった。
段差のあるところは当然のようにカニ歩きになるのだが、
だんだん体軸が右側へ右側へずれるようになってきた。
大腿前面が元気なら1段1歩ずつまっすぐ降りられる。
そこが痛くなってくると、痛みを和らげるため、
1段2歩のカニ歩きになるのだが、痛みが増すにつれ
次第に後ろの筋肉を使おうとし、月夜見後の下りでは
ほぼ進行方向に対して直角を向くような格好で下った。
その下りで一瞬左膝にピリっと激痛が走った。
この痛みは紛れもなく、6年前に経験した腸脛靭帯炎の痛みと
酷似していた。
「うは、ヤベェ。これ以上捻ると故障してしまう。」
腸脛靭帯炎の痛みは半月板を損傷したのではないか、
と疑ってしまうほどの鋭い痛みだ。鈍痛でないこの類の痛みは
決して無視してはいけない、と思う。
カニ歩きする為に左ひざは進行方向に対して、
0度と90度を何度も行き来するので、左外側の筋肉を酷使してしまうのだ。
対処としては、カニ歩きを始めたらずっと右側を
向きながら下りればいいのだ。スピードは落ちるが、
左膝を回外して故障リスクを高めるよりは、
安全策を採る方が賢明だった。とにかく今日の目標は完走だ。
確実にその目標を達成できる対処法を採ったつもりだった。
そのため、後ろから相変わらずストックを持った人たちが
雪崩のように落ちてきて、私を抜き去るとまたすぐに見えなくなっていった。

左膝も心配だったが、この頃には右足のくるぶしの上部辺りが
だんだん強く痛み出した。平地と登りは問題なかったが、
緩い走れる下りでも右足は痛むようになった。右足を背屈するときに
その筋を使う。一回右足をグネっていたので、その炎症が
じわじわ拡大しているようだった。
両大腿四頭筋と右足の痛み。これさえ労われば完走できると信じて、
出来るだけ負担が無いように走った。

御前山への登りはよく覚えていない。例のように前の人に追従して、
譲ってもらえばその前を行くし、そうでなければ、前の人の2mくらい
後を歩き、登りでも息が整っていたら広い場所で追い抜くような進行だった。
ほとんどの人は2mくらい近づくと、道を譲ってくれた。
相変わらず上手に木にもたれ掛かりながら休憩している人は多くいた。
時折、叢の中からガサガサと物音が聞こえたが、その音の主は
野生生物ではなく全てがヒトだった。

御前山 46.6km 13時間56分

御前山には多くの人がおり、休んでいる人もいたが、
私は写真も撮らずに素通りした。すぐ下山に向かった。
下山する前にスタッフの人に一つだけ確認した。

私「あの~すみません。この先の水場ってあとどれくらいですか?」
ス「この先の最寄りの水場は大岳山、約8km。」
スタッフの方は周りのランナーに聞こえるような大きな声で、
バナナのたたき売りをするかのような口調でそう教えてくれた。
(もちろん私はバナナのたたき売り現場なんて見たことはない)
そかそか、やっぱ大岳山に水場あるんだな、と安心した。

御前山を下ろうと登山口へ向かった。
その先の光景に愕然とした。
「マジか!なんじゃこりゃ!」
下りがツライ私にとっては、見たくもない光景だった。
下り直後から段差のある階段がこれでもか、
というくらい並んでいたからだ。意気消沈していても何も始まらないので、
トボトボと下り始めるのだが、カニ歩きでも1歩1歩に衝撃が重なる。

「ハセツネって。。。

大腿四頭筋クラッシャーかよ!」

今までの下りでも難儀していたのに、ここの坂と言ったらなかった。
下れども下れどもこれでもかというくらい下りが続いた。
階段が終わっても、九十九折の下りで、その傾斜も結構あった。
やや傾斜のある下りでは右足の痛みにも響いてきた。
ハセツネコースを初めて通る私にとって、
この下りがいつまで続くのか分からなかったが、
レース後半は下り基調なので、当然この先もこのような下りが
度々現れることを想像すると、うんざりするのだった。
でも、ネガティブな思考は一瞬に消え、
一つ一つ前に進めば絶対ゴールにたどり着くのだから、
と足を持たせることだけを考えて前進することを考えた。

長い下りの途中では、私の後ろに何人もの人の列が出来るので、
適宜安全な場所で後ろの人達に先に行ってもらった。
何人に先行してもらったのだろうか、いつもの具合で
「あ、お先にどうぞ。」
と下りで道を譲ったのだが、その人は先に行こうとしなかった。

男 「あの~、実はヘッドライトの電池が切れてしまって・・
   私も先を急がないので、ついて行ってもいいですか?」
私 「あ、そういうことですか。。。」

後に付かれるプレッシャーを感じて、急いだ末にケガをしたくなかったから
道はすぐに譲っていたのだが、そういう事情なら気にすることもないか、と
その男の人の前を先行した。

「またすぐに人が大勢やってきて、そうしたら後ろの人もあとからやって来る
人達について行けるだろうな。」
と思いながらそのまま下ることにした。
5分もしないうちに、3人くらいの隊列がやってきた。道幅が狭く、
追い抜いてもらうにも具合が悪かったので、
2, 3分そのまま先行して安全なところで道脇に寄った。
「あ、足が痛いので先に行ってください。」
電池が切れた男の人にそう伝えると、一瞬困ったような表情をしたが、
状況を理解して下さったみたいで、後ろの3人を先に行かせ、その後にまた
光を頼ってついて行かれた。
その光景を見送るが、まだまだ下りは続くようだった。
九十九折りの下りでは、先行するライトが遠くの方で右に左に行く様子が窺われ、
はるか遠くにその光は次第に見えなくなっていった。
その光を見送りつつも、私のカニ歩きはいつまでも続いた。

途中、多少の登りもあって束の間の休息となったが、
ひたすらの下りが終わってやっと大ダワに到着した。

大ダワ 49.7km 15時間18分

大ダワでは左側に係員専用らしきテントがあり、舗装道路にはブルーシートが
敷いてあった。ここにも疲れを癒すために数人が仰向けで寝転んでいた。
「ほうほう、ここがかの有名な大ダワか。。」
大ダワという響きが珍しく、リタイアポイントとして
毎回アレキさんが紹介してくれるものだから、この地名は脳裏に焼き付いていた。

ブルーシートに吸い込まれそうになったが、思いとどまり、
余裕のない下りでは補給をすっかり忘れていたので、
ジェルを1本流し込んで先を急いだ。
今日は何本もジェルを使用しているが、普段こんなに甘ったるい物を
食べることはない。その甘い液体が奥歯にしみる度に、ポカリで薄めて
親知らずの痛みを軽減させた。

さて、ここからは再び登りだ。安定の登りだ。もう下りなんてまっぴらだ、
と思っていたので登りがうれしくて仕方なかった。
まさか登りをこんなに待ち遠しく感じる日が来るなんて
今まで想像もしなかった。

相変わらず登りの足は順調だった。すぐに前に追いつきどんどん抜ける。
下りで抜かれっぱなしだったのを晴らすかのように、
サクサクと登り続けた。
下りではほとんど水は飲まなかったが、登りでは水が欲しくなった。
御前山で残り500mLとなっていた水はその時残り300mLくらいに減っていた。
気温も下がり、水を飲むペースは下がっていたが、
やはり手元に残りが少なくなっていくのは心細かった。

けれど、もうすぐ水場もあるようだし、
水場に着いたら思いっきり飲んでやろう、
と思っていた。

しまったな、自然水だものな。
歯にしみるけどBCAA+クエン酸のやつ持って来ればよかったかな。
ポカリは1L用だから扱いにくいんだよね。
ムサシって500mL用だけど高いよな。近くに売ってないし。
おまけに味がダメだと書いてあるブログもあるし、
本当のところはどんな味がするのかな、
などなど飲み物に対する関心はいつまでも続いていると
上の方からスタッフの方が頂上を知らせる大きな声を出していた。
大岳山に到着したのだ。

大岳山 53.7km 16時間27分
大岳山
頂上についてようやくもうすぐ夜明けが来ることを知った。
辺りの景色は薄っすら色づき始め、闇はだんだん消えていきそうになっていた。

「アレキさん、見てるよ。朝が来たよ。俺、これ見に来たんだよ。
お日様の光がこれからどんどん強くなって、
そして凄いエネルギーをくれるんだよね?!」

多分、すこし笑みがこぼれていたと思う。うれしくなって写真を撮ってみた。
大岳-2
普段、珍しい観光地に行っても、あまり写真を撮りたいなんて思わないのだが、
この時ばかりはうっすら浮かぶ山々がとても美しい物に見えた。

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